
「Frequency|周波数の地層」
展覧会タイトル|Frequency(周波数の地層) 会期|2023.04.17 – 2023.04.21 会期中無休 14:00–19:00
会場:東京都中央区日本橋久松町4-12 コスギビル4F 長亭GALLERY 主催:長亭GALLERY
「世界は、見えない振動の重なりとして存在している。」
—— 周波数研究より
私たちが知覚している世界は、連続した像としてではなく、無数の振動の集積として構成されている。
光は波として揺らぎ、物質は固有の周波数を持ち、身体は環境とのあいだで絶えず共振し続ける。しかし、日常的な視覚はそれらを「安定した形」として統合し、振動そのものを不可視のまま覆い隠してしまう。
では、その周波数の層が露出したとき、世界はどのように見え始めるのだろうか。
《Frequency》は、可視化されない振動の構造に焦点を当て、それぞれ異なる媒体を通して「世界の解像度」を再編成する試みである。ここで提示されるのは、像そのものではなく、像が成立する以前の揺らぎの状態である。
劉瞫璐(Liu Shenlu) は《SiO2.F7hz.T5.5s》《SiO2.F1.5hz.T10s》において、光ファイバーと形状記憶繊維を用い、振動する光の流れを空間内に定着させる。数値として記述された周波数は、物質の内部を通過しながら、可視と不可視の境界を曖昧にする。
中村悠斗(Nakamura Yuto) は《都市スペクトル|Urban Spectrum》において、都市の夜景を縦方向の光の線へと分解し、時間と空間を周波数の帯として再構成する。像は解体され、視覚はスキャンされるプロセスそのものへと還元される。
劉禹岑(Liu Yucen) の《Meterial III》は、3Dプリントされた金属構造と漢方薬を組み合わせ、異なる物質の振動特性を交差させる。人工的に形成された形態は、内部に含まれる有機的要素によって、その存在のリズムを揺らがせる。
高橋澪(Takahashi Mio) の《静かな侵入者|Silent Intruder》は、昆虫の身体を通して、微細な知覚の領域を提示する。暗い青の層の中で浮かび上がる存在は、環境とのあいだで発せられる微弱な振動を象徴し、見過ごされてきた生命のリズムを可視化する。
袁願力(Yuan Yuanli) は《The Host Body II Anomaly (Newborn)》において、身体をひとつの共振装置として捉え直す。異物の侵入は異常ではなく、新たな周波数の生成として提示され、身体の境界は絶えず再編される。
盛遠歌(Sheng Yuange) の《The Sky Tetris》は、都市の空を断片化し、視覚的なリズムとして再構築する。建築と空のあいだに生じるズレは、空間が持つ見えない拍動を浮かび上がらせる。
これらの作品に共通するのは、「形になる以前の状態」への関心である。
振動が像へと収束する直前の不安定な層において、世界は単一の意味を持たず、複数のリズムとして同時に存在する。哲学者 Maurice Merleau-Ponty が述べたように、知覚とは固定された像の認識ではなく、世界とのあいだに生じる絶え間ない相互作用である。
《Frequency》は、その相互作用の痕跡を可視化する装置である。
光、身体、物質、都市——それらはそれぞれ異なる周波数を持ちながら、ひとつの空間の中で重なり合う。観者はその重なりの中に身を置き、見るという行為そのものが、振動の選択であることに気づくだろう。
Paul Klee の言葉を借りれば、
「芸術とは、見えるものを再現するのではなく、見えない力を可視化することである。」
本展は、その見えない周波数が、かすかに像として立ち上がる瞬間を捉えている。




