「花は皆 ちりて あとなき
こずえには 実のらん
秋のたゞ 待たれけり」
河田政樹、小林丈人、戸谷森、忽滑谷昭太郎
2021.9.1(Wed)-9.12(Sun)
13:00-19:00 会期中無休
会場:東京都中央区日本橋久松町4-12コスギビル4F 長亭GALLERY
入場無料
info@changting-gallery.com
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像が炙り出されるという事がポジとネガの同時によって起こる現象であるように、世の常は相反そのものといってもいいと思う。
でも相反であることを普段直に感じとることはとても難しい。それは不安を伴うからだと思う。
我々が日々成長していることと、刻々と死に向かっていることは同時だけれど、成長を実感するためには死の予感を追い払わなければ希望としての未来を感じれないし、自分の立場を(居場所を)確立するためには正義と悪とを設定し悪を追いやり、なんとかして自分は正義であると証明しなければならない。
展覧会のダイレクトメールは本当に厄介だ。当たり前だけれど、送った相手にしか届かないし、突然届く。その見た感じはあたかも展覧会があるような雰囲気がある。だいたい展覧会の2、3週間前に発送され、来てくださいというような気持ちがこもっている。
昨年4名のメンバーが集まり早々にDMを“作る”ことを始めた。今年の1月末を皮切りにある期間をおいて計5回DMを作っては送った。おそらくそれらは展覧会があるようでないような、あったとしてもいつなのかよくわからない雰囲気があったり、「来なくても大丈夫だよ」という気持ちがこもっていたのかもしれない。
不安に思った受取人がメールや電話で問い合わせてくれた事もあった。同じようなハガキを作ってくれて返してきた人も稀だがいた。
何はともあれこのハガキには常に不安がつきまとっていた。それを作っては送るという(回を重ねるたびにハガキは成長していった)一連の尽力によつて展覧会自体の実現がある意味遠のく(引き伸ばされる)事となり、不安はいよいよ増幅してきている。
花は皆 ちりて あとなき
こずえには 実のらん
秋のたゞ 待たれけり
今回の題名は、今年4名が集まった際に所沢の富の神明で引き当てたおみくじ第25番末吉の短歌を引用した。人の不安や欲望、希望の対象であると同時にそれとは全く無関係かのような自然のことわり(相反)が詠われている。
花が散ってしまったことが不安であること、これから実るであろうことが希望であること…、そういう考えとは全く無関係な他者が(木が、相反が)存在することのわからなさ、不気味さは不安でもあり楽しみでもあり、あらゆる“作る”事のスタンスだと思っている。
小林丈人