
「目の絵|menuet, on your screen」
飯田美穂 MIHO IIDA
2022年2月19日(土)- 3月6日(日)
13:00-19:00
月、火休み
会場:東京都中央区日本橋久松町4-12コスギビル4F 長亭GALLERY
入場無料
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展覧会に寄せて
「on your screen - まぶたが落ちてまた上がるまでのあいだのintermission」
有名な絵画をメインにした展覧会を見にいくと、その絵の前に人だかりができて存分に見られないことが多々ある。ふと、このひとたちは何を見ているんだろうとおもった。つくる前の視点をどこかに置いてきたようなきもちになった。たくさんのフィルターを抱えて、イメージは網膜/身体を通過する。
セザンヌは近代絵画の父と言われている。わたしにとってもめちゃくちゃ参考にしているだいすきな作家だ。これまでたくさんの作家を引用してきたが、セザンヌはどうしてだか避けてきた。絵を絵で描くことを始めてから数年が経ち、自分の中で折り合いみたいなものがついてきて、今なら描いても怒られないような気がしたし、描いてみようと思えた。
次に記す文は、セザンヌ先生への大義名分を兼ねているのかも。
定点で見るとき、まばたきする度にイメージの記憶は分割される。それをキャンバスやアクリル板、スライドフィルムの、同じまたは異なるフィールド上にイメージの粒子を落とすことで、分割もしくは連続体のイメージの質量としての把握を試みてみる。端的に言えば、絵画という物体を構成するもの・エレメントに分解して考えて、また集約してみること。
わたしはイメージを、それ自体にはボディーの無い、バーチャルな存在であると捉えている。絵画の構成を単純に見れば、ある種フレキシブルな存在であるイメージが、絵の具やインクという流動的な粒子と結合し、さらにそれが布+フレームなどにたどりつき、絵画として置き換わる流れになっている。
イメージの粒子を落とされた支持体そのものが、イメージの記憶のかけらの結合体としてアウトプット、分散されることで、メディウム(媒介物)として機能するのだとおもう。(あるいはintermissionのような存在で)
わたしたちの身体と等しく何らかの粒子の集合体である絵画と、バーチャルなイメージの狭間を行ったり来たりすることで、絵画とイメージの結びつきを切り離したり、逆に強化したり、その距離を自在に設定することで見出されるものは何か。脳内に散らばるイメージの記憶の断片とランダムな拾い上げ作業を通して、わたしはその何か、もしくはどこかに置いてきた視点を取り戻そうとしているのかもしれない。
このように、わたしがやっていることはただのイメージのお遊びかもしれないけど、それを見るひとの想像力がフォローしてくれるから、つくることと見せることはセットだとおもっている。そしてイメージを借りてきて、わたしの脳からだれかの脳にたどり着くまでの遅延を発生させてみることにする。
…と、いったん考えを整理するために書き出してみたものの、ほんとはそんなことどこ吹く風のようにおもって描いていたりする。
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飯田美穂 | Miho IIDA
2016年名古屋芸術大学洋画2コース卒業、2018年京都造形芸術大学大学院(現・京都芸術大学)ペイン ティング領域油画コース修了。現在、愛知県北名古屋市にある共同スタジオartist run space i/o(アーティスト・ラン・スペース アイ・オー)を拠点に制作活動中。主に名画をモチーフに油彩画を描く。ヒトが価値あるものとして意図的に遺してきたものと、それを引き継いでいくことの意味を考えながら、ヒトが捉えている「絵/イメージ」とは何か、なぜヒトは絵を描くのかについて考えている。
経歴
• 2018年- artist run space i/o (愛知県北名古屋市) にて制作活動中
• 2018年 京都造形芸術大学大学院 芸術専攻 芸術研究科 ペインティング領域油画コース 修了
• 2016年 名古屋芸術大学 美術学部 美術学科 洋画2コース 卒業
• 2014年 イギリス・ブライトン大学 B.A. ペインティングコース 派遣交換留学
• 2012年 名古屋芸術大学 美術学部 美術学科 洋画コース 入学
展示歴
• 2021年 二人展・Welcome to the Painting Jungle(biscuit gallery/東京)
• 2021年 個展・1QQ1/本をよむ絵、しるしを所有するもの(銀座蔦屋書店 ART WALL GALLERY/東京)
• 2020年 個展・□(1x1/2x2), they-1(FINCH ARTS/京都)
• 2019年 個展・目の絵/menuet(FINCH ARTS/京都)