
グランプリ
受賞者なし
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優秀賞

揺らぎ
鈴木 柚乃 YUNO SUZUKI
2025
910×727mm
oil on canvas
作品コンセプト
とある雨の日。窓に目を向けると水滴や湿度が重なり、像の境界は曖昧に揺れ、存在の気配だけが浮かび上がって見えた。
ないけどあるような、その曖昧さを捉えたい。
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優秀賞

window sketch 25-01
岡路 貴理 Killi Okaji
2025
910×727mm
木製パネル、麻紙、岩絵の具、水干絵の具
作品コンセプト
グリッドによって輪郭を解体された対象は抽象化されたパターンとなり、
反射やコラージュによって都市的な風景と自然や経年による表層が組み合わされ、現代の都市的な風景
の中の美しさを再発見させる。
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特別賞

icon
洞田 燈里 Akari Horata
2025
273×220mm
キャンバスに油彩
作品コンセプト
私は牛のイラストをよく描く、だから友達にもSNSで繋がってる人にも「ウシの人」認定されている。大好きな牛のアイコン、その向こうには私がいる。
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奨励賞
OJUN賞

佇まい
佐藤 椎菜 Sheena Sato
2025
268×356mm
クリームクロッキー紙 ,オイルパステル ,ボールペイントペン
作品コンセプト
今そこに佇んでいるあなたが全て。
そこに在る者の過去も背景も、今この瞬間を凌駕することはない。
あなたは凛々しくて美しかった。
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諏訪敦賞

知ることになる庭
濱田 楓 Kaede Hamada
2025
652×530mm
キャンバス、油彩
作品コンセプト
今春、実家を出て新生活を送ることになった。窓から庭がよく見える部屋だ。
これから暮らしていく中で、庭の姿は移ろい変わるだろう。
花が咲いたり、枯れたり、虫や鳥などがやってきたり、死んだりするだろう。
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沓名美和賞

A Woman in Reflection
葉子欣 TZU HSIN YEH
2025
910×725mm
oil on canvas
作品コンセプト
“My portrait series explores the finitude of the flesh and the sculptural quality of oil paint.I shaped a fragmented statue out of clay, drawing inspiration from the form of the Eleven-Faced Guanyin, modeling various emotional expressions on the heads above this woman. In the actual sculpture, she lowers her head and gaze, but I depicted her face from a low angle. Unlike Guanyin’s compassion, she meets the viewer’s eyes directly, appearing at once as a thinker and as a judge.
The work was inspired by my experience of observing a Guanyin statue in a temple. When a sculpture is translated into painting, it must rely on the painter’s vision and sensitivity; every angle evokes a distinct emotion and composition. Using light and shadow reminiscent of the Baroque period, I allowed the figure to emerge from darkness, creating a still moment in which the viewer encounters her face-to-face.
“The emotion with which we look at a face matters more than the expression we perceive upon it. We occupy another’s face with our own.”
— 《The History of the Face》
In her silent contemplation, I saw thought itself—and in that moment, my world fell into quiet.”
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長亭GALLERY賞
受賞者なし
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審査員コメント
OJUN氏
それぞれの絵があって、どれも一定以上の質の高さで制作されているのであるが、全体にこれ!と強く訴えてくるものがない印象であった。創作の意味は個人が只今現在の状況の中で自分の制作に絡まるいろいろな限定を一つ一つ解除してゆくことで昨日まで描いていたものを越えてゆくことだと思う。そういう「新品」を本人もぼくたちも見たいのだ。そういう粒立ちがあまり見えてこなかったように思えた。
“上出来”をシェアしたいわけではないのだ。
優秀賞の「揺らぎ」鈴木植乃さん、「window sketch 25-01」岡路貴理さん、受賞おめでとうございます。風景が“そうと見える”のは、実はとても物理的、現象的、空間的な事態の混成状況がぼくらの見憶えや体験に触れてくるからだ。ぼくときみに絶対同じことは起きていないはずなのにその混成が曖昧な見幅をつくり、それぞれの心身のどこかに触れてくるからだ。鈴木さんの絵はそういうところに触れてくるものがある。見幅(身幅)が世界であることをよく試行して表現にしている人だと思った。
「window sketch 25-01」は日本では70〜80年代の建築でよく使われたガラスブロックの採光効果とグリッドによって分割されて見える外景が描かれている。明度を変え、輪郭がぼけて見える外景は当時見ていた印象とはまた異なる視界をぼくらに見せているように思う。現在ぼくたちの日常において、デジタルによる視界の明瞭さは解像度を上げ細部まで見える鮮明さを獲得して久しいが、同時にノイズや画像画質の荒さを伴う対照的な視界の曖昧さを求めている。この絵の前で半世紀の間に(ガラスブロックは19世紀後半に製造がされたものであるが)変化した二つの視界を体験していることになる。特徴ある透過性と幾何学的な分割による表面は、光と実景を遮蔽と装飾に加工された視界が実はぼくたちの目の欲望、眼差しの代替でもあることをあらためて気づかせてくれる。日本画の材料と技法で描かれた絵からそういうことを考えさせられたのは初めてだ。
他に気になった作品をいくつか。田中真歩さん「想う」。女性がバスタブに浸かりながら富士の絵を見ている。実は人ではなく人形だそうだ。自身の身代わりだそうだ。絵に描くことで身代わりにならないか?絵はそうなっている。しかも富士の絵があることで”銭湯”の身代わりも果たしている。二つのアバター。興味深い絵。
NI LIさん「heat component-1」。このフォーマットがおもしろい。従来のペインティングの要素を残しながらこのサイズ感と他の要素や素材と接合させてこれまでにない印象が新鮮だ。
八澤季実さん「goodbye」。この絵のサイズ感もとてもいい。描くモノがサイズを決定している。大きな壁でもこの絵は見えるだろう。ただコンペによっては不利かもな。そのあたりは心得済みか。描画にも絵の外身にも誠実だ。
いろいろ迷ったが個人賞は佐藤椎菜さんの「佇まい」にした。紙のドローイングだ。額装までされている。コンペであることを一瞬忘れさせる。何のけれんもなく、対象をスケッチしている。コメントでは“今そこに佇んでいるあなたが全て”とある。本人に見えていることと描くことがちゃんと交換されている。この絵こそ佇まいを感じる。もしかしたらそんな絵は今回この絵ただ一枚かもしれない。一粒が見えた。
諏訪敦氏
2025年度の審査会では、たった1点の小品により受賞者を決定する、その判断の迷いを実感することになった。投票で審査員3人全員の支持を得たのは、岡路貴理の「window sketch 25-01」と、鈴木柚乃の「揺らぎ」だけであった。グランプリをどちらにするかの議論の中で、岡路の日本画の枠組みを意識させない、タイトで振り切った制作姿勢に注目が集まる一方、鈴木の的確な描写で魅力あるイメージを作り出す非凡なセンスにも期待感が寄せられた。議論は鈴木を支持する声に傾きつつあったが、「過去のグランプリ受賞作、たとえば松田ハル、松浦美桜香らと比較すると、1点の力強さに欠けるのでは」という指摘がなされた。年ごとに決められる賞の応募作品を、過去の受賞作品と比較することが、はたして妥当であるかは疑問が残るところだが、この「長亭GALLERY展」が現代絵画の若手界隈で、「獲るべきプライズ」として認知を広げる中、審査側にも一定の基準を意識した判断が求められてきているのかもしれなかった。
表現領域が違う鈴木と岡路であるが、奇しくも反射し透過される光の現象を足がかりに、非存在を描こうとする意識は共通で、通じるものがあった。ともに有望な逸材であり、ここで無理に優劣を決めることも躊躇われ、グランプリの対象者としない代わりに、異例の処置として優秀賞を1枠増やし、同じ賞を分け合うという結論に至った。
個人で決められる奨励賞は、濱田楓「知ることになる庭」、野上真希「淵」、森千咲「柑橘」の中で迷うことになったが、筆運びの饒舌さと1点にかける熱量に感じるところがあり、濱田の「知ることになる庭」とした。
沓名美和氏
今回のコンペティションは、近年の社会状況やアートマーケットの空気感を強く反映した展示であったように感じられた。
全体として静かではあるが完成度の高い作品が多く、内省性を深めた表現が目立つ一方で、社会や他者とどのようにつながるのかという視点や、明確なメッセージ性をもった作品、あるいはストレートに情熱を伝えるような表現は、比較的少なかったように思う。
この傾向は、美術に限らず近年の音楽シーンなどにも見られる傾向です。内省的に自分自身を読み解くような作品が増えている一方で、社会や外部の世界へと強く響いていく、いわば鋭く尖った性質をもつ表現は減少しているように感じられる。現在の混沌とした社会や、アートマーケットが抱える停滞感、不安定さが、そのまま作品のトーンとして現れているようにも思われた。
そのような中で、私が選んだ作品の一つが葉子欣の作品である。葉子欣は、パンという日常的で儚い素材を用いて仏像を制作し、さらにそれを絵画へと展開していくという独自の制作プロセスを持っている。その流れには明確な必然性があり、素材、行為、イメージが連続的に変換されていく点に、大きな可能性を感じた。
このプロセスはシリーズとして発展していく余地があり、今後はもう一歩踏み込み、コンセプトと表現との関係性をより明確にすることで、さらに強度のある作品へと展開していくことが期待される。
岡路貴理の作品についても触れておきたい。日本画という伝統的な技法を出発点としながら、窓越しに見える都市景観をモチーフとして制作を行っている。ガラスを介して捉えられた風景は、見えるようでいて確かには掴めない情景として立ち現れ、物質の性質による反射や分断、解体を伴いながら、結果として現代美術におけるコンセプチュアルな思考へと接続されている。その姿勢は日本画の枠組みにとどまらず、今後の展開に大きな可能性を感じさせるものであった。
全体として本コンペティションは静かな展示ではあったが、その中には、今後大きく成長していく可能性を秘めた確かな「芽」が存在していたように思う。皆さまの今後の展開に期待します!
長亭GALLERYより
今年度の審査において、応募作全体には一定の水準が認められたものの、過去のグランプリ作に見られたような、空間全体を支配するほどの圧倒的な表現強度に達する作品は見受けられませんでした。
本アワードは今、若手作家の登竜門としての役割に留まらず、その評価軸の信頼性自体が社会的に問われるフェーズにあります。こうした趣旨に鑑み、単に基準を形式的に満たすかどうかではなく、到達すべき水準に照らして厳密に判断することこそが主催者の責務であると考えます。 以上の議論を尽くした結果、今年度は該当作なしとし、グランプリの授与を見送る判断に至りました。
なお、最終選考に残った二名については、表現の方向性や将来的な可能性において、高く評価すべき点が多々認められました。そのため、本年度の特例として優秀賞の枠を拡充し、両名に同賞を授与いたします。 本アワードが求める水準を真摯に捉え、単なる完成度を超えた、より野心的な表現の提示が今後なされることを切に願っております。
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人気賞
来場者一人一票で、票数が一番多い作家さんが人気賞を得る。

少しだけ変わった木製パネル/ミアゲル
岸野 椰子 yako kishino
2025
273(w)×20(d)×250(h)mm
木製パネル・油絵の具・モルタル・金具
この木製パネルは油絵の具やモルタル、金具がついたり、削られたりを何度も繰り返しできた。
そのプラスとマイナスの作業の中で、形は歪になり、表面は少し薄くなった。
最初になかった素材が付着して、新しい表情ができる。
最初にあったパネルの表面は失われて、見えなかった内層が現れる。
木製パネルは木製パネルのまま、少しずつ形を変えていく。
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入選作品


















